しずか旅
a green leaf with drops of water on it

Photo by Adalee Penguin on Unsplash

夏のオフシーズン旅

梅雨こそ行き時。6月に空いている観光地5選

2026-05-11

梅雨シーズン(6月)は、多くの旅行者が「雨だから」と行き先を諦める時期だ。その結果、人気スポットの混雑が驚くほど緩和される。年間を通じて最も空いていると言っても過言ではない場所すら出てくる。

しずか旅のコンセプトは「オフシーズンにこそ、本当の旅がある」。梅雨はまさにその典型だ。雨が緑を濃くし、川の水量を増し、温泉の湯けむりを際立たせる。晴天の観光写真では決して見られない景色が、曇り空の下に広がっている。雨の日だからこそ会える風景が、この国には確かに存在する。

本記事では、6月に特に空きやすく、かつ雨との相性が良い観光地を全国から5ヵ所選んだ。青森の奥入瀬渓流から沖縄の西表島まで、梅雨こそ行き時の場所を紹介する。

1

6月の平日、14kmの渓谷を独り占めできる理由

奥入瀬渓流の本来の賑わいは7〜8月の夏休みと、紅葉の10月だ。6月はその狭間で、観光バスも修学旅行もほとんどやってこない。6月の空いているこの時期に来ると、渓谷の表情がまるで違う。朝の早い時間帯は霧が渓谷に漂い、苔むした岩と飛沫が斜光の中で輝いている。昼になると木漏れ日が遊歩道を斑模様に照らし、水の音が葉の重なりの向こうから重層的に聞こえてくる。夕方には光が角度を変え、水面が橙と緑の混じった複雑な色を見せる。梅雨の雨は苔にとって最良の季節だ。降り続く雨が岩肌の苔を鮮やかな緑に変え、増水した流れが落差を持つ滝の音を一段と大きくする。梅雨の奥入瀬をすすめる理由は、その苔と水量の組み合わせにある。渓谷沿いの遊歩道は平日であれば人とすれ違うことなく歩け、自分のペースで立ち止まり、写真を撮り、ただ水音に耳を傾ける時間が持てる。

2

梅雨の那須街道に、アジサイとアカマツが並ぶ

那須高原は、栃木県北部の那須連山の裾野に広がる高原だ。那須町の観光統計では、8月の入込客数が年間で群を抜き、2位の月の1.5倍を超える。人出が落ち着くのは、その少し前の梅雨の6月だ。那須街道の両側では約1,200本のアジサイが3kmほどにわたって咲き、同じ街道沿いには約14,000本のアカマツの天然林がある。観光協会は、このアカマツとアジサイの取り合わせが梅雨の季節を彩ると紹介している。6月はロープウェイも動いていて、茶臼岳(1,915m)の山上へ上がれる。山麓には舒明2年(630年)開湯と伝わる那須温泉郷があり、鹿の湯は年間を通して営業している。雨の日は、湯本の温泉街で湯に浸かって過ごすのもよい。

3

梅雨明け前の五色沼。観光客が最も少ない6月

五色沼の最混雑期は紅葉の10月と残雪残るゴールデンウィークだ。5月後半から一息つき、夏休みが始まる前の6月は、五色沼で人が少ない最も静かな時期にあたる。散策路に人影はまばらで、沼のほとりで立ち止まっても誰かに急かされることがない。曇り空は五色沼にとって悪くない条件だ。晴れた日には空の青が水面に映り込んで沼の本来の色を変えてしまうが、曇りの日は光が均一に当たり、エメラルドグリーンや深い青が沼それぞれの固有色を純粋に見せてくれる。梅雨の五色沼をすすめる理由の一つがこれだ。毘沙門沼から始まり、いくつもの沼が連なる散策路は、それぞれ色と大きさが異なる。人のいない道を自分のペースで歩き、各沼の前で足を止め、その日の光の加減で変わる色を眺める。そのような時間のゆったりした使い方は、混雑するシーズンの五色沼では許されない贅沢だ。

4

梅雨明けの前後の西表島。パインの旬とサガリバナの季節

西表島は、八重山諸島の竹富町に属し、2021年7月に世界自然遺産に登録された島だ。竹富町の統計で島を訪れた観光客の数を見ると、令和5〜7年の3年とも、6月は12か月のうち9〜10位で月平均を下回った。多いのは3月と4月だ。気象庁によると、沖縄の梅雨明けは平年6月21日ごろにあたる。6月は八重山のパインがそろって収穫期に入り、下旬からはサガリバナの観察ツアーも始まる。サガリバナは、夕暮れ時に咲き始めて翌朝には散る花だ。ただし島の西部(上原側)は6月も月平均を上回るので、西部のツアーは早めに予約してほしい。ピナイサーラの滝のあるヒナイ川は、立ち入れる人数に1日200人の上限があり、登録引率ガイドの同行と事前の立入承認申請が要る。

5

雨の日も外湯めぐり。浴衣で歩く6月の城崎温泉

城崎温泉は、兵庫県豊岡市の大谿川沿いに柳並木が続く温泉街だ。宿の内湯ではなく外湯が主役で、浴衣に下駄で湯を巡る「外湯めぐり」が町の作法として残っている。冬は松葉ガニを目当てにした客で宿が埋まるが、しずか旅の城崎温泉の記事がすすめるのは、6月から7月中旬の平日だ。外湯は屋内が中心なので、梅雨の雨の日でも湯めぐりができる。町花のあやめを町のあちこちで一斉に植える「あやめ月間」は、毎年6月の上旬から下旬にかけてある。観光協会が6月の旬に挙げる海の魚は、イサキ、あかみず(アコウ)、あご(トビウオ)、さざえ、白いか(剣先イカ)の五つだ。駅前のさとの湯は建て替えのため2024年4月から長期休業しており、ほかの湯も改修で休館する時期がある。観光協会の公式サイトは営業中の外湯の混雑状況を公開しているので、宿を出る前に確かめてから回るとよい。

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