松山城
まつやまじょう
愛媛県松山市の勝山に建つ松山城は、江戸時代から残る現存12天守のひとつです。松山市の統計で月別に追える天守の入場者数を見ると、2月は年間の月平均を下回ります。一方でこの時期は、伊予柑・ポンカン・甘平・せとかと愛媛の柑橘が月を通して出そろう数がもっとも多くなる月のひとつ。城を降りたロープウェー街では、その柑橘を生搾りジュースやジェラートで味わえます。
愛媛県松山市の中心部、標高132mの勝山の山頂に松山城の本丸があります。慶長7年(1602年)に築城が始まり、約四半世紀をかけて完成しました。江戸時代までに建てられた天守が残る「現存12天守」のひとつで、堀之内を含む城山公園全体が国の史跡、城内の21棟が重要文化財に指定されています。二之丸から本丸にかけては、山の斜面を登る2本の石垣で麓と山頂をつなぐ「登り石垣」があり、南側はほぼ完璧な状態で残っています。現存12天守の城郭でこの構造が確認されているのは、松山城と彦根城だけです。天守にのぼれば松山平野を360度見渡せ、晴れた日には西日本最高峰の石鎚山や、日本一細長い半島である佐田岬まで視界に入ります。
この城を2月に訪ねる理由は、二つあります。ひとつは人出です。松山市が毎年公表している観光客推定表には、松山城天守の入場者数が月別で載っています。直近3年を平均すると多い順に3月・11月・5月と続き、2月は年間の月平均を下回ります。紅葉を目当てに人が集まる10月・11月とは、同じ城とは思えないほど条件が違います。もうひとつは柑橘です。愛媛県のかんきつ食べ頃カレンダーで出荷時期をたどると、伊予柑・ポンカン・甘平・せとか・不知火・はるみ・レモンの7品種が2月の月を通して出回ります。これは年間でもっとも多い数で、並ぶのは3月だけ。その3月は、松山城がいちばん混む月です。
そして柑橘は、城を降りてすぐ味わえます。ロープウェイの乗り場へ続くロープウェー街と、道後温泉商店街。松山市はこの二つの通りにある柑橘商品専門店で、その場で搾る生搾りジュースやジェラートが味わえると案内しています。同じロープウェー街の観光物産館には、蛇口からみかんジュースが出ます。愛媛の都市伝説と言われるあれは実在していて、料金を払うと専用コップをもらえる仕組みです。2月なら、市が「柑橘の大トロ」と紹介するせとかが出回っています。1月下旬から3月中旬が食べ頃で、濃厚なコクとたっぷりの果汁が持ち味。伊予柑は、愛媛では明治22年に松山で栽培が始まったと県が記しており、この土地から広がった柑橘でもあります。
海の幸は、旬の魚を土地の料理で受け取る形になります。松山市公設水産地方卸売市場の旬の食材カレンダーでは、2月にイカ・サバ・ハマチ・ヒラメ・ブリ・カワハギ・ヒジキ・ホゴ(カサゴ)が並びます。ホゴは市場のせり人が選ぶ「瀬戸の小魚ベスト10」の第2位です。松山には、この瀬戸の魚を使う郷土料理が受け継がれてきました。松山鮓は、正岡子規が郷土料理の誇りとし、初めて松山を訪れた夏目漱石にふるまったと伝わる一品。北条地区の鯛飯は、身や骨を米とともに炊き込む形で、刺身をのせる宇和島の鯛めしとは作り方が違います。ほかに、タコ飯や、秋山真之にちなむ海戦汁も土地の味です。
見どころ
- 1現存12天守のひとつ——江戸時代に建てられた天守がそのまま残る
- 2登り石垣——現存12天守の城郭では松山城と彦根城だけに確認されている防備の構造
- 3天守最上階から松山平野を360度。晴れれば石鎚山や佐田岬まで見渡せる
- 42月は愛媛の柑橘が出そろう月——伊予柑・ポンカン・甘平・せとかなど7品種が月を通して旬
- 5城を降りたロープウェー街で、生搾りジュースやジェラート。蛇口からみかんジュースも
- 6松山鮓・北条の鯛飯・タコ飯——瀬戸の魚を使う郷土料理が受け継がれている
混雑カレンダー
混雑ピーク — 3月・10月・11月
3月・11月は松山城天守の入場者数が年間1位・2位、10月も年平均を上回る(松山市「松山市観光客推定表」の月別入場者数・3年平均)
狙い目 — 2月
12月・1月・2月は松山城天守の入場者数が年間の月平均を下回る。とくに2月は伊予柑・ポンカン・甘平・せとか・不知火・はるみ・レモンと愛媛の柑橘が月を通して出そろい、瀬戸内の旬の魚も並ぶ(温州みかんは例年2月下旬ごろまで・ブラッドオレンジは例年2月中旬ごろから)
おすすめ訪問時期
2月が狙い目です。松山市の統計で月別に追える天守の入場者数は、2月が年間の月平均を下回ります。平日の午前中ならさらに人が少なく、急な階段の多い天守内をゆっくり見られます。柑橘は2月を通して伊予柑・ポンカン・甘平・せとかなどが出回りますが、温州みかんは例年2月下旬ごろまで、ブラッドオレンジは例年2月中旬ごろからです。出回りは年によって前後するので、旅の前に県や産地の発信で確認してください。
オフシーズンだから会える景色
紅葉の10月・11月、そして3月は、天守の入場者数が年間の上位に集まります。2月はそこから離れ、年間の月平均を下回る月です。ただ2月の値打ちは、人が少ないことだけではありません。愛媛の柑橘が月を通して出そろう品種数は、2月と3月が最も多くなります。ただし3月は、松山城がいちばん混む月です。冬にあたる2月なら、同じ食の厚みを静かな城で受け取れます。急な階段の続く天守内を自分の速さで見てまわり、降りたロープウェー街で生搾りのジュースを飲む。その順路が、この月はいちばん無理なく通ります。
アクセス
JR松山駅から伊予鉄道市内電車「大街道」下車、ロープウェイ乗り場まで徒歩5分
松山自動車道 松山ICから国道33号線経由で約20分
松山城駐車場(喜与町駐車場)
よくある質問
Q2月の松山城は、紅葉の時期と何が違いますか?
松山市の観光客推定表に載る天守の入場者数を直近3年で平均すると、11月は年間2位、10月も年平均を上回ります。2月は年間の月平均を下回ります。同じ天守でも、本丸広場の人の密度や待ち時間が変わります。
Q2月に行けば、どんな柑橘が食べられますか?
愛媛県のかんきつ食べ頃カレンダーと県のかんきつ紹介では、2月に月を通して出回るのは伊予柑・ポンカン・甘平・せとか・不知火・はるみ・レモンの7品種です。ただし温州みかんは例年2月下旬ごろまでで、ブラッドオレンジは例年2月中旬ごろから。月の前半と後半で顔ぶれが少し入れ替わります。年によって前後するので、出発前に確認してください。
Q柑橘はどこで味わえますか?
松山市は、ロープウェー街と道後温泉商店街にある柑橘商品専門店で、その場で搾る生搾りジュースやジェラートが味わえると案内しています。ロープウェー街は松山城のロープウェイ乗り場へ続く通りなので、城を降りた流れで寄れます。同じ通りの観光物産館と松山空港1階には、蛇口からみかんジュースが出る設備があり、料金を払って専用コップをもらう仕組みです。
Q市場で瀬戸の魚を買ったり食べたりできますか?
普段はできません。松山市公設水産地方卸売市場は、一般の方が市場内で水産物を購入することはできない施設です。年に数回の「三津の朝市」開催日のみ一般に開放されますが、令和8年度の予定は5月・10月と令和9年1月で、2月の開催はありません。2月に瀬戸の魚を味わうなら、松山鮓や鯛飯といった郷土料理の形で探すのが確実です。
Q冬の松山城で気をつけることはありますか?
天守は江戸時代から残る木造建築で、空調設備がありません。冬は室内でも冷えますし、階段が急で狭いところがあります。靴を脱いで上がるので、脱ぎ履きしやすく滑りにくい靴下や靴があると楽です。また天守は12月第3水曜日が休みです。
Q松山城のほかに、2月に寄れるところはありますか?
城山公園の裾野には二之丸史跡庭園と堀之内地区が広がり、いずれも城の一部で歩いてまわれます。市街に下りれば、正岡子規と夏目漱石をめぐる道筋が松山鮓とともに残っています。道後温泉方面へ足を延ばせば、商店街の柑橘商品専門店も加わります。